大久野島とは?瀬戸内海に浮かぶ小さな楽園
大久野島(おおくのしま)は、広島県竹原市に属する瀬戸内海に浮かぶ小さな島です。周囲約4.3キロメートル、面積は約0.7平方キロメートルというコンパクトな島ですが、年間を通じて多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。その最大の理由は、島内に暮らす数百匹の野生のうさぎたちです。
広島県の忠海港からフェリーでわずか15分ほどの距離にあるこの島は、「うさぎ島」という愛称で国内外に広く知られています。島に一歩足を踏み入れると、あちこちからうさぎたちが駆け寄ってくる光景は、まさに別世界のようです。SNSや海外メディアでも頻繁に取り上げられ、外国人観光客からも「Rabbit Island」として高い人気を誇っています。
なぜ「うさぎ島」と呼ばれるのか
大久野島が「うさぎ島」と呼ばれる理由は、もちろん島に多数のうさぎが野生の状態で暮らしているからです。現在、島には推定で数百匹のうさぎが生息しており、島内のいたるところでうさぎと出会うことができます。
うさぎたちは人に慣れており、観光客が近づくと自ら寄ってくることも珍しくありません。特にエサを持っていると、一斉に集まってくる姿は圧巻です。この人懐っこさが「うさぎの楽園」というイメージを作り上げ、多くの人々を魅了してきました。
しかし、この「楽園」という言葉の裏には、うさぎたちが直面する厳しい現実があることも忘れてはなりません。それを理解するためには、まず大久野島の歴史を知る必要があります。
大久野島の知られざる歴史
地図から消された島 ― 毒ガス製造の暗い過去
大久野島には、日本の近代史における暗い過去があります。1929年(昭和4年)、旧日本陸軍はこの島に毒ガス製造工場を建設しました。島の立地が本土から離れており、秘密を保持しやすかったことが選ばれた理由です。この時期、大久野島は軍の機密保持のため、地図からも消されていました。
工場では、びらん剤(マスタードガス、ルイサイト)や催涙剤など、複数の種類の化学兵器が製造されました。終戦までの約16年間にわたり、大量の毒ガスがこの小さな島で生産されていたのです。工場で働いていた労働者の多くは、毒ガスの影響で健康被害を受け、戦後も長年にわたって後遺症に苦しみました。
戦後の処理と島の変遷
1945年の終戦後、島に残された毒ガスは連合国軍の指示のもとで処理されました。海洋投棄や焼却処分が行われましたが、完全な無害化には至らず、現在でも一部の区域では土壌汚染が残っていると言われています。
戦後しばらくの間、大久野島はほぼ無人の状態が続きました。その後、1963年に国民休暇村が開設され、観光地として少しずつ整備が進められていきました。現在も島内には毒ガス製造時代の建物の廃墟が複数残されており、「毒ガス資料館」では当時の歴史を学ぶことができます。
うさぎの野生化と観光地化
大久野島にうさぎが増えた経緯については諸説ありますが、1971年に地元の小学校で飼われていたうさぎ数匹が島に放されたという説が広く知られています。天敵がほとんどいない環境の中で、うさぎたちは急速に繁殖し、やがて島全体に広がっていきました。
2010年代に入ると、SNSの普及とともに「うさぎ島」としての知名度が爆発的に高まりました。国内のみならず海外からも観光客が押し寄せるようになり、大久野島は広島県を代表する観光スポットの一つとなったのです。
現在の島の状況
現在の大久野島は、休暇村を中心とした観光施設と、島全体に広がるうさぎたちの生息地で構成されています。島内には車の通行がほとんどなく、徒歩や自転車で島を一周することができます。
しかし、表面的な「かわいい」イメージとは裏腹に、島のうさぎたちは多くの問題に直面しています。観光客の数は季節や曜日によって大きく変動し、平日や冬場にはエサを持ってくる人が極端に減少します。うさぎたちの生存は、ある意味で観光客の訪問パターンに左右されるという不安定な状況にあるのです。
うさぎたちが直面している深刻な問題
慢性的な水不足
大久野島には天然の淡水源がほとんどありません。うさぎたちにとって、水の確保は最も深刻な問題の一つです。特に夏場は気温が高く、脱水症状で命を落とすうさぎも少なくありません。島内に設置された水飲み場も限られており、すべてのうさぎに十分な水が行き渡っているとは言えない状況です。
食料不足と栄養の偏り
島の植生は、長年にわたるうさぎの食害により大きく荒廃しています。自然に生える草だけでは到底すべてのうさぎを養うことはできず、観光客が持ち込むエサに大きく依存しています。しかし、観光客が与えるエサは必ずしもうさぎの健康に適したものばかりではなく、スナック菓子やパンなど、うさぎにとって有害なものが与えられるケースもあります。
怪我や病気
野生の環境で暮らすうさぎたちは、怪我や病気のリスクにも常にさらされています。カラスに攻撃されて目を負傷するケースや、うさぎ同士の縄張り争いによる怪我、さらには観光客の不注意による事故なども報告されています。島には動物病院がなく、怪我をしたうさぎが適切な治療を受けることは極めて困難です。
訪問者にできること
大久野島を訪れる際には、うさぎたちのことを第一に考えた行動を心がけることが大切です。以下は、訪問者ができる具体的なことです。
適切なエサを持参する:うさぎ用のペレットや新鮮な野菜(キャベツ、にんじん、小松菜など)を持参しましょう。スナック菓子やパン、チョコレートなどは絶対に与えないでください。
水を提供する:ペットボトルに水を入れて持参し、島内の水が少ない場所で容器に入れて提供することは、うさぎたちにとって大きな助けになります。
SOSマップを確認する:実際の島の状況はSOSマップで確認できます。どのエリアのうさぎが水やエサを必要としているか、怪我をしたうさぎがどこにいるかなどの情報を事前にチェックして、効果的な支援を行いましょう。
うさぎを追いかけない:写真を撮りたい気持ちは分かりますが、うさぎを追いかけ回すことは大きなストレスになります。うさぎの方から近づいてくるのを静かに待ちましょう。
抱き上げない:うさぎは抱き上げられることを本能的に恐れます。骨折のリスクもあるため、絶対に持ち上げないでください。
大久野島は、その歴史的背景と現在のうさぎたちの状況を合わせて理解することで、単なる「かわいいうさぎの島」以上の意味を持つ場所です。訪問する一人ひとりの心がけが、うさぎたちの暮らしを少しでも良くすることにつながります。
大久野島を訪れたら、SOSマップを開いて
水が足りないエリアを確認し、水やり報告をしてください。
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